コンテンポラリーダンスと劇場の未来形
おおきな物語が崩壊し、私たちはこれまでの豊かさを読み直し、新しい<幸福>を模索しなければならない時代にいます。
そのような時代にダンスの、そして劇場の果たす役割とは何なのか。
ダンスは様々なアートのなかで、<身体>で、あるいは<身体>を表現することが際立った特性になっています。元来、神への捧げものとして踊られていたダンスが、やがて劇場のなかで観客に向かって踊られるようになり、近代舞踊史がつづられてきました。
高度に情報化された現代社会に生きる私たちの身体は、増々孤立化しているようにみえます。劇場でダンスを観ることで、私たちはどれほど、その孤独から解放されるのでしょうか。生身の身体が出会う<場>として、どのような交感がおこるのでしょうか。
近年、劇場以外での公演も増加しています。その場のもつ力(自然、空間、記憶等)と出会い、探り、格闘しながら、そこでしか、あるいはその時しか成立しない作品が生まれることもあります。そこにもダンスの可能性を感じるとともに、劇場との相互的で相乗的な関係が醸成されるとよいと思います。
DANCE BOXの運営するArtTheater dB神戸は席数120の小さな劇場です。しかし、実施している事業は、劇場内にとどまらず様々なかたちで地域社会と連携しています。劇場の運営を主軸にしながら、アーティストの育成事業や国際交流事業、地域における教育や福祉、まちの活性化等の事業にも関わっています。
コンテンポラリーダンスも舞台で表現することにとどまらず、様々な文脈のなかで、その活動範囲を広げています。
これからコンテンポラリーダンスがどのような状況を生み出していくのか。この小さな劇場からどのような世界が広がっていくのか。
常に新しい価値観を生み出すための種を蒔きつづけたい。
NPO法人DANCE BOX Executive Director
大谷 燠