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【対談インタビュー】2019/02/23 – 24 DANCE PJ REVO『STUMP PUMP』| 田村興一郎×杉原邦生<前半> | BLOG | NPO DANCE BOX

2019.2.21

【対談インタビュー】2019/02/23 – 24 DANCE PJ REVO『STUMP PUMP』| 田村興一郎×杉原邦生<前半>

INTERVIEW

ダンスボックスで今年度より新たに導入した「アソシエイト・カンパニー/アーティスト制度」。 アソシエイト・カンパニーでは、DANCE PJ REVO(主宰:田村興一郎)と活動を共にします。2月23日・24日の新作公演『STUMP PUMP』に向けて、振付・出演の〈田村興一郎〉と、演出家・舞台美術家の〈杉原邦生(KUNIO主宰)〉との対談を行いました。二人は京都造形芸術大学の同窓生であり、来月3月27-31日に実施するKUNIO公演『水の駅』※1にて田村は振付を担います。公演のクリエーションの渦中にある二人の対談のまずは<前半>をお送りします。

 

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田村 今回の対談相手として杉原邦生さんにお願いすることになりました。邦生さんは京都造形芸術大学の10年上の先輩です。大学の授業を受けている際に公演の宣伝しに来られて、邦生さんの当時のプロフィールにEXILE FAMILY(EXILEのファンクラブ名)であると書かれていたのが印象的で。その後、作品を何度も観ました。とにかく、同世代がすごく影響を受けていたし、僕もダンス作品をつくる上で影響を受けていました。そしてなんと嬉しいことにKUNIO14公演『水の駅』にお誘いいただいて、邦生さんの作品づくりに関われることになった。今回の対談を経ることで、なお一層楽しくなるのではないかなと思ったのが今回のインタビューのきっかけです。

 

杉原 新長田にあるダンスボックスには、まだ行ったことがないんだよね。大阪時代は何回かある。人がいない遊園地みたいなところでちょっと怖かった(笑)。で、ダンスボックスの「アソシエイト・カンパニー」ってどういうものなんですか?

田村 振付家・ダンサーの育成プログラム「国内ダンス留学@神戸」が一旦休止して、その後に生まれた新しい事業だそうです。ダンスカンパニーをサポートし、毎年2月に新作公演の実施、ダンスボックスが海外と僕とのコネクションを作ったり、積極的に推して頂いたりしています。

杉原 何年間?

田村 3年間です。2021年まである予定です。

杉原 生きていればね(笑)?

田村 そうですね。途中でクビにならなければ(笑)

杉原 これは公募制なんだよね。なんで応募しようと思ったの?

田村 自分のダンスカンパニーのあり方を見直したかったからです。新しいチャンスを掴めるのならなんでも行こうと思ってたから。公演の制作費も出ますし。劇場の近くに宿があってそこに滞在しながら、劇場でクリエーションができるのって、海外ならあるけど日本では少ない。恵まれた環境でのクリエーションがしたかった。

杉原 ダンスでも少ない…?

田村 少ないですね。

杉原 初めて田村くんの作品を観たのは、京都のアバンギルドかな。たしかKYOTO EXPERIMENT 2016のフリンジ・プログラムでの上演だったと思う。

田村 それ『余裕の朝』だ。

杉原 それから、この前の『F/BRIDGE』※2を観ました。『余裕の朝』はそんなに覚えていないんだけど、ごめんね(笑)、『F/BRIDGE』で田村くんの作品を久しぶりに観て、それがすごく良かったし、衝撃的に面白かった。始まってすぐに、これはもう賞を取るなと思ったんだよね。

田村 嬉しいです。

杉原 始まった瞬間にいわゆるダンス的な匂いがしなかった。つまり、”コンテンポラリーダンスっぽい始まり”だなというのがなかった。コンテンポラリーダンスって、もういろんな人が言っていることだと思うけど、もはや“コンテンポラリーダンス”っていうジャンルになっていて、何もコンテンポラリーではないという状況があるでしょ。例えば、歌舞伎も始まりは傾奇者(かぶきもの)と言われて斬新なものだったけど、今は日本の“伝統芸能”だから。時代とともに、新しかったものが古くなってあるポジションを獲得していく、それは自然な流れ。話を戻すと『F/BRIDGE』には観客としてイメージしている“コンテンポラリーダンスっぽさ”を裏切ってくれた快感があった。冒頭、男たちがさらーっと出てきてコンクリートブロックを背負うんだよね。

田村 そうです。

杉原 始まり方が良い意味で興味を持たせない。なんだ、この汚い男たち!って。興味のない身体に興味を持たせていくのが、僕にとって面白かったし、演劇的だったなという感じがした。

田村 大分こだわり抜いた所です。

杉原 ダンスってさ、特殊で異常なことをするじゃない。例えば、人が渋谷の交差点の真ん中で「今晩どこへいくの?」って台詞を言ったとしても別に誰もなんとも思わない。でも、その人が突然一振り踊り出したら、何この人?ってなる。 

田村 引きますよね(笑)。

杉原 っていうぐらい、日常的には異常な行為。それを舞台上で行うときに、それが当たり前のことのようにやられちゃうと、げんなりしてしまう。

田村 そうですよね。限られた空間っていうのもあるし。

杉原 パフォーマーや演出家にとっての“当たり前”が舞台上のすべての前提になっちゃってる。異常なことを前提として始める、その良さも勿論あると思う。でも、そこを疑った上でそれやっていますか、と疑問に思っちゃうんだよね。田村くんの場合は、舞台上に人が立って踊るという行為を信じ切ってない良さがある。ちゃんと疑ってる。そこがいわゆるコンテンポラリーダンス的な匂いがしない一つの要因のような気がしたんだけど、どうですか?

田村 その通りですね。疑いを持ちながら作っています。僕にとって、“日常性”は非常に大事にしたかった。見ていて面白いこと以上に、リアルさを共感してほしいと思っています。異質な中で、観客と繋がっている部分はどこかなと思ったときに、それが“日常性”でした。日常的にブロックを運ぶことをダンスにしようとすると、どうしても“ダンス”に縛られてしまう。例えば普通の人がやらない持ち上げ方や動きを探ったりしてしまう。もしくは、極ありのままの身体を見せる。どうも二極端になり過ぎる。ナチュラルな身体とつくった身体の二極端。それらの間に、オリジナルのルートを探るのが僕の中で大事なところになっていましたね。

杉原 あと、田村くんの作品で僕がもう一つ思ったのは“無駄がなかった”こと。無駄っていろんな考え方があるんだけど、ここで言う“無駄がない”っていうのは、“必要な無駄しかない”ということ。無駄は必要なんです。その無駄がその作品において必然であることが重要で、田村くんの作品にはそういう意味で無駄がなかった。舞台上に現れているもの、空間、動き、照明、音響すべてにおいて無駄がなかった。

田村 なるほど。

杉原 『F/BRIDGE』はコンペティションでの上演だったから、上演時間の制限があることで、削ぎ落とさざるを得なかった部分もあったと思うし、そのことが一つの要因かもしれないけど、とにかく無駄がないということと、きちんとダンスを疑っているということ。で、これは演出家的な視点だと思う、ダンサー的な視点ではなくて。振付家には演出家体質とダンサー体質の二通りあると思っていて。劇作家もそう、作家体質と演出家体質と。僕の恩師でもある太田省吾さんは演出家体質だと思う。『水の駅』なんて、戯曲って言ってもト書きが20数ページあるだけじゃん。あれは演出の作業で立ち上がっているものなんだなって思う。田村くんの場合は、田村くんが出演していてもしてなくても作品は成立する気がしていて、それって演出家体質だからだと思うんだよね。

田村 そうなんですよ。もともと『F/BRIDGE』は卒業制作のときに作っていたのですが、自分が大人数を相手に作っている中で、自分がダンサーとして入りづらい状況を作ってしまった。その経験を経て、自分が出る時にものすごく考えるようになりました。誰にでもやれそうだけどやれなさそうな案配な感じがいいかなと思う。また、その人にしかできないオリジナリティや身体性を出すと、その人が培ってきたダンス身体を優先してつくる事になったりして。

杉原 振りそのものが閉じていってしまう、その人個人の所有物になっちゃう、みたいな感じだよね。振りを作っていく時に、踊る側、ダンサーの交換性を考えるって、演劇で言うと当て書きしない、そこに別の俳優が入ってきて変わっていっていい、そういう感じなのかも。

 

杉原 振付家かダンサーかどちらか選べと言われたら、どちらを選ぶ?

田村 振付家ですね。僕は他の人の作品には出ない。断っているのではなく呼ばれないんですよ(笑)。京都芸術センターの谷さんからは「いい意味でスーパーダンサーではない」と言われていて。誰もが使いたくなるようなダンサーではなくて、だからこそ逆に自分はこのようなものが作れるということを誇張したい。

杉原 そもそもダンサーとして呼ばれたいの?

田村 あまり思わないですね。それだったら作りたい。

杉原 出演オファーしたら面倒くさそうと思われているのかも(笑)。振付家や演出家のイメージが強いとどうしてもね、誘う方もね。

田村 そこは共感できますね。

杉原 今回は出ますか?

田村 はい、今回も出ます。今回は見所を言ってしまうと、ダンスボックスの劇場でしかつくれない構造になっています。

杉原 そうなんだ。かなり空間性を意識した感じ?

田村 はい、劇場を四六時中使わせてもらえる環境で、僕が見えてきた事で作っています。ここでしか上演できない形になっていますね。

 

……後半に続く……

 

 

(※1) 

  • KUNIO14「水の駅』
  • 日時:2019年3月27日 (水) 〜3月31日 (日)
  • 会場:森下スタジオ(東京都江東区森下)
  • 作:太田省吾 演出・美術:杉原邦生 
  • 振付:田村興一郎
  • http://www.kunio.me/stage/kunio14/

 

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  • (※2)
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  • 『 F/BRIDGE 』 
  • 2015年1月初演。京都造形芸術大学の卒業制作として上演した。2018年2月「Yokohama Dance Collection 2018 competition Ⅰ」にて上演。若手振付家のためのフランス大使館賞とシビウ国際演劇祭賞受賞のダブル受賞。

 

 

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DANCE BOXアソシエイト・カンパニー DANCE PJ REVO『STUMP PUMP』

  • 平成30年9月4日に発生した台風第21号は日本列島に多大なる被害を与えた。
  • 名所  京都鞍馬を塞ぐ”倒木”をモチーフに、倒れてしまった命を起こす。
  • この体は何度でも立ち上がる。
  • 日時:2019年2月23日(土)15:00/19:00
  •    2019年2月24日(日)15:00
  • 会場:ArtTheater dB Kobe
  • 料金:前売 一般:2,800円/学生・会員・長田区民・65歳以上:2,500円
  •    ※当日はプラス500円
  • 特設ページ:https://archives.db-dancebox.org/program/2654/
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