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【対談インタビュー】中間アヤカ×寺田みさこ〈後半〉|3/23-24 中間アヤカ&コレオグラフィ『フリーウェイ・ダンス』 | BLOG | NPO DANCE BOX

2019.3.19

【対談インタビュー】中間アヤカ×寺田みさこ〈後半〉|3/23-24 中間アヤカ&コレオグラフィ『フリーウェイ・ダンス』

INTERVIEW

  • ダンスボックスで今年度より新たに導入した「アソシエイト・カンパニー/アーティスト制度」。アソシエイト・アーティスト枠では〈中間アヤカ〉と活動を共にしています。3月23日、24日の初単独公演『フリーウェイ・ダンス』に向けて、中間アヤカと、ダンサーの寺田みさことの対談を行いました。その後半です!後半ではダンサーならではの視点、ダンサー特有の言語でどんどん話が進んでいきます。どうぞ!〈前半〉をご覧になる方はこちらからお読みください。

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  • 寺田 今回の『フリーウェイ・ダンス』について、聞かせてください。
  • 中間 5名の方に“初めて踊った時の記憶”をもらって、それを振付として扱って、私はそれを元に踊ります。だから、その方たちの振付を踊っている時は、自我がない状態にもなります。でも、もらってるものが“記憶”っていうすごく曖昧なもので。それぞれの記憶(振付)をもらいにいく過程で気付いたことがあります。
  • 寺田 何に気づいたの?
  • 中間 その人がその記憶を渡すときに、「この場所に行かないと渡せない」とか、「こういう手順を踏まないと渡せない」ってことがあるのですが、記憶そのものではなくて、その記憶の回りにあるフワフワしたものが私はすごい面白いなと気づいたんです。でも、そういうものに手をつけ始めると、自分が今までダンサーとして蓄えてきた方法が何ひとつ使えない状況に陥ってしまっています。そうなると自分が容れ物になるってことが難しくなってきました。
  • 寺田 難しそうね。
  • 中間 すごく難しいです。でも、『フリーウェイ・ダンス』がダンスの作品だって感覚があんまりなくて。普段人の作品に取り組む時はダンスの向こう側にあるものを見せる、それをお客さんと共有するっていう意識はあります。でも『フリーウェイ・ダンス』ではもっとダンスを考えてみたい、ダンスについて問いかけをしてみたいです。「ダンスのためのダンスは良くない」ってダンスボックスの大谷さんが使う言葉なんですけど、「ダンスのためのダンス」を、ダンサーだから考えてみたいなって思う。ダンスそのものを。
  • 寺田 もう少し詳しくいうと?
  • 中間 『フリーウェイ・ダンス』は、振付家ではなくてダンサーである私が作る時間だって考えた時に、ダンスを通して伝えたいメッセージがある訳ではなく、それよりもダンスそのものをもうちょっと考えてみたいなっていう感じです。
  • 寺田 ドラマトゥルクの藤澤(智徳)くんとの「往復書簡」※2  を読んで、最初のほうに「ダンスになる」という言葉が出てきましたが、それってどういう感じ? 言葉で言うの難しいやろうけど。
  • 中間 ここ数年「ダンスとしか呼ぶことのできない時間」って言葉をよく使っているのですが、私の中ではすごく瞬間的な、流れ星みたいな感じなんですよね。なんか、「あっ!」みたいな。「あっ!」って思って、その数秒後にはもう流れていってしまっている。そういう瞬間が、ダンス作品を見ていても、日常生活の中でも、やってくる時があります。でも、自分が踊っていてそういう感覚に襲われることは1度もないですね。それを、どうにかして作ることができないかなって、ずっと考えています。
  • 寺田 瞬間?持続性がある可能性はない?
  • 中間 あ~、10秒程度なら(笑)。
  • 寺田 (笑)。
  • 中間 あまり長くは感じたことはないですね。あまり持続性はないものだと思っています。もしかしたら、そういうものに出会っていないだけかもしれないですけど。
  • 寺田 それは他のものに例えたりできる?
  • 中間 なんでしょうね、ドキってします(笑)。
  • 寺田 (笑)。
  • 中間 トキメキみたいな。
  • 寺田 それが起こる頻度って、日常での方が多い?それともダンスを観ている時によく起こるものなの?
  • 中間 ダンスを見ているときの方が少ないかもしれない。
  • 寺田 少ないかもしれない!? では、それを起こすための糸口みたいなものって今あるの?
  • 中間 全然ないです。手探りです。でも「ダンスとしか呼ぶことのできない時間」を起こすことを目的にして作業していると、絶対起こらないんじゃないかっていう気はしています。3年前にJCDN主催の「踊りに行くぜ!!」で作品を発表したのですが、その時も「ダンスとしか呼ぶことのできない時間」をキーワードに作りました。その時は、“何かモノを作るような動き”を使って創作したのですが、かなり難しかったです。
  • 寺田 作ろうとしたら逃げてしまうんやね。
  • 中間 今回はあんまりそのことを念頭におかずに。
  • 寺田 起こったらラッキーくらいのもので、ただし起こった時には絶対逃さない、みたいな状況さえ作っておけば良いのかもね。

 

  • 中間アヤカ振付作品『月月火水木金金』 「踊りに行くぜ!!Ⅱ(セカンド)」より(2016)
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  • 中間 私はもっとダンスを掘ってみたいと思うんです。すごいマニアックやなって思うんですけど。
  • 寺田 私自身は、「ただただ見ていられるダンスに出会いたい」っていう欲求が強いですね。例えばパフォーマーが“ゆっくり歩く”っていうことをしていたとして、その姿になにがしかの説得力があればただただ見ていられると思うんです。ところが、本人がそのつもりになってるだけの雰囲気しか見えてこなかったら「この人なんでゆっくり歩いてるんやろ?はよ歩けるんちゃうん!」とか思ってしまう(笑)。何も考えたくないというわけではないんやけど、作品の意図を読み解くことを楽しめる場合とそうでない場合があって。時々この読み解こうとしている自分の状態が窮屈になるというか、不自由さを感じることがあるんです。ものすごく極端な例やけど、風景とか現象って、ただただじーっと見てたりできるよね。
  • 中間 できます。
  • 寺田 砂の山が風でさーっと崩れていく様子とか、雲が緩やかにすーっと流れていくのをじーっと眺めることができるのと同じように、ある特殊な作業をしてる人の身体はずーっと見ていられる。その時の自分の状態によって、具体的なことを想起することもあれば、特に何かを思い出したり考える事もなく、でも自分の感覚とか思考はフル稼働しててすごく自由な感じ。あの感じがすごく好き。そんなん作れたらいいなぁ。これってダンスなら可能性があるような気がしています。
  • 中間 なるほど。
  • 寺田 私はトリッシャ・ブラウンの作品がとても好きなんだけど、そういう意味で至福の時間です(笑)。
  • 中間 先日、東山青少年センターで行われた「ダンススタディーズ1」の修了公演にお手伝いに行って、3回本番を見たのですが、すごく良かったんです。あるシーンで、何も与えてくれない身体があって、でもその身体そのものは多くの情報量を持っている。私はその身体をただただ見ていました。何も与え合わないけど、その場を共有していることが、すごく異常だなって思いました。人の身体ってそんなにマジマジと見れないじゃないですか、普段では。「こんなに見せて、い、いいんですか!?」みたいな感覚に陥った瞬間があって、その時ドバーって涙が出ちゃいました。何も起こらないんですけど、すごい素敵やなって。
  • 寺田 まさにぴったりの例!私はいつも、ダンサーは身体にできるだけ沢山の情報を抱えている方が良いと思っています。振付家から与えられた情報のみを安易な形で主張されたら、見ることの能動性を奪ってしまう危険もあるし。そして、さっきの自意識の問題とも繋がってくるよね。
  • 中間 「ダンススタディーズ1」で行われていたダンスは、舞台に立っている彼らが私たちに与えようとしていないから、私は見ることを拒否してもよかったんですけど、でも見なきゃいけない感覚にさせられました。
  • 寺田 見入るっていう感じよね。私は目を凝らすとか耳を澄ますみたいな感覚が好きで。だから、そういう状態になりたい。見る時も、作るとき・踊る時もそういう感覚を呼び起こしたい。
  • 中間 わかります。
  • 寺田 見入りながら見入られているような感覚?そういうのがいいなぁって。
  • 中間 お客さんのことを物理的に見ていなくても、見る事ができるんだよなぁって思いました。
  • 寺田 お客さんとの交感によって、踊っている時の変化は常に起こってますね。与えるとか主張するという一方的な開き方ではなくて、お客さんを受けいれる開き方ができている状態が心地いい。疲れるけど、集中力がいるからね。そう言えば「散漫な集中力」って言葉を稽古場ではよく使ってるかも。全方向に集中力を開く感覚。疲れるけど癖になる感じ。ところで私たちさっきからずっと、ダンサー特有の特殊言語で喋ってる気がするけど、大丈夫かな(笑)。
  • 中間 確かに(笑)。今回、一緒に作っている藤澤くんが、いわゆるダンサーではないので、その点では助かっています。「分かんないです」って言ってくれるから(笑)。

 

  • —— 二人の会話は二転三転しながらまだまだ続きましたが、ここで対談を終了いたします ——
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  • 寺田みさこ
  • 幼少よりクラシックバレエを学ぶ。91年より砂連尾理とダンスユニットを結成し国内外で作品を発表。「トヨタコレオグラフィーアワード2002」にて、次代を担う振付家賞(グランプリ)、オーディエンス賞をダブル受賞。平成16年度京都市芸術文化特別奨励賞者。06年以降ソロ活動を開始。これまでに石井潤、山田せつ子、白井剛、笠井叡など様々な振付家の作品に出演。アカデミックな技法をオリジナリティへと昇華させた解像度の高い踊りに定評がある。
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  • ※2「往復書簡」
  • 中間アヤカとドラマトゥルク・藤澤智徳との間で行われている、ダンスと振付にまつわる往復書簡
  • https://correspondanceis.tumblr.com/
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  • 中間アヤカ&コレオグラフィ『フリーウェイ・ダンス』
  • 日時:2019323日(土) 17002100 / 24日(日) 11301530
  • 特設ページ:https://archives.db-dancebox.org/program/2854/

 

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