2019.2.22
【対談インタビュー】2019/02/23 – 24 DANCE PJ REVO『STUMP PUMP』| 田村興一郎×杉原邦生<後半>
INTERVIEW2019.2.22
【対談インタビュー】2019/02/23 – 24 DANCE PJ REVO『STUMP PUMP』| 田村興一郎×杉原邦生<後半>
INTERVIEW
対談の後半は、DANCE PJ REVO新作『STUMP PUMP』を入り口に、お二人のつくり手としての姿勢やまなざしの先に触れる内容へと広がっていきました。続けてどうぞ!
<前半>はこちらからお読みください。
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杉原 今回この事象を扱おうと思ったきっかけは何だったんですか?
田村 非現実的なんですが、劇場に機材や美術を仕込んでそのまま50年間バラさなかった状態にした空間を見たいというのが僕の中の一番最初のアイデアだったんです。埃まみれだろう、もしかしたら灯体が落ちているかもしれない。そして、虫が入ってきたり、雑草が生えてきて動物たちの住処になっていたら面白いなと想像しました。そういったビジュアルイメージを最初に持ったんですよね。
杉原 なるほど。
田村 このアイデアのイメージを強くするためにリサーチに行く必要があるんじゃないかと考えました。そこで、自然が豊かであろう京都の北部に行きました。それがタイミング的に凄く悪くて。本当に行きたかったのは、山の中にある、根っこがぼこぼこしている鞍馬の「木の根道」っていう場所だったんですが、台風の被害で立ち入り禁止になっていて行けなかったんですよ。その近くまで行った時に、自分が本来描いていたイメージよりもそっちの風景の衝撃が勝ってしまって。民家に木が刺さっていたり、電柱が倒れていたり…衝撃をリアルでもらった。
杉原 今の話を聞いていて、空間のことから考えていく、そこにアンテナを張っているっていうことが、振付家としての視野を広げているんじゃないかって思った。振付家の人って、どうしても身体にフォーカスしていく人が多いでしょ?
田村 身体に寄っていきますよね。
杉原 こっちからすると「分かんねーよ」って思ってしまう。身体が動くこととかその技術があることに驚きや感動を得ることはもちろんあるんだけど、「身体のことすごく考えてやっています。私たちは身体に向き合っています」って言われても、「いや、知らねーし!分かんねーし!」みたいな(笑)
田村 そうなんですよ、コンセプトと身体性は乖離しちゃいけないと思っています。逆に、磁石みたいに合い過ぎるのも違っていているかな。
杉原 そのバランスが良い作品って少ないよね。ダンス公演にお客さんが少ないとか、ダンスシーンの世界が狭いとかって聞くことがよくあるけど、それはそもそも作品の世界が狭いからじゃないかと思っちゃうんだよね。
田村 すごくそう思います。社会性が見えてきた作品の方が面白いって言ってくださった方がいて、すごく覚えています。演劇作品ってそこを突いてくれる。僕はそういうものの影響を受けていますね。ダンスが上手いのは分かる、振付の独創的なものも分かる、逆に身体のユニークさの魅力を知らない人に対しての礼儀はどこ?って思う。また、喋り出したら感情作ったり…ミニドラマが備わったダンス、なら演劇やろうよっていう(笑)そういうのもあります。
杉原 踊るより喋った方が早いじゃん!っていう。
田村 そうですそうです(笑)
田村 ちょっと話題を変えて、邦生さんに質問があるのですが、いいですか?
杉原 いいよ。
田村 これまでオーディションで出演者を選んだことがなくて、全てオファー型なんですよね。どういう作品が生まれるかわからないし、僕の作品を好きでずっと見続けてくれている人もあんまりいない気もするし(笑)
杉原 オーディションはやってみてもいいんじゃない?僕が2009年に関東で初めてやったオーディションの時は応募者9人だったよ(笑)
田村 なんか邦生さんでも9人と聞くとホッとしますね(笑)
杉原 9人中4人合格だったからね!凄い合格率じゃない?!(笑)
田村 でも『水の駅』では…
杉原 200人以上。ありがたいよね。でも、最初はこんなもんだったんだよ。
田村 最初にオーディションする時の不安ってありました?
杉原 不安はもちろんあったと思うな。誰が受けてくれるんだろう、っていう。でも、思い返してみると、最初の方が本当に一緒につくりたい人が受けに来てくれていた気がする。実際に僕の作品を観て、本当に出たいと思ってくれている人。名前知ってるから、とかじゃなく。だから、9人の時のオーディションで採った俳優たちは今でも一緒にやっていたりするから。これから先のこと考えて、今やってみるのも良いんじゃない?
田村 でも落とした人にその後に会うのは気まずくないですか?
杉原 まぁ、ちょっとはね。でも重要なのは、落ちたあと。落ちたオーディションの作品はできる限り観に行った方が良いと思う。「オーディションに落ちた作品を観に行かない俳優が多すぎる!!」と強調したいね。俳優として成長する機会をひとつ逃しちゃってるんじゃないか、って僕は思う。
田村 なぜ落ちたのか、自分へのフィードバックになりますよね。
杉原 そう。実際に作品を観れば、どういう俳優が求められていたのか、自分に何が足りなかったのか、もしくは、そもそもの相性が悪かっただけなのか、分かるわけじゃん。そこから俳優としての自分を客観視して、学ぶわけでしょ?
田村 そうですよね。
杉原 オーディションに落ちた作品を観に行かない俳優ってちょっと理解できないんだよね。僕だったら絶対観に行く、悔しいから。もちろん、観に行きたくない気持ちも分かるし、どうしても観に行けない場合ってのもあると思うけど。
杉原 そろそろ対談も終わりの時間ですね。最後に質問していいですか。
田村 はい、お願いします。
杉原 この先のダンスに何かしらの希望はありますか?続けることが大変だってよく言うじゃない。それは、そこに希望を持ち続けることが大変だからなんだと思う。僕はざっくり言うと、演劇を続けることによって社会に影響を与え続けていきたい。小さくても良い。そこから想いが広がって行ってほしい…そういう希望があるんだけど。田村くんはどうですか?
田村 僕も全く同意します。むしろ、それがなかったら踊ることを辞めてもいいって思いますね。社会に影響を与えたい、難しいと思いますけど。
杉原 その与える影響って、具体的に言葉にするとどうなりますか?
田村 振付家とダンサーの関係性の中で言えば、作家として至極当然なことですが、まず僕の作品でしか出せない世界観や感性を味わって欲しいと思っています。また僕の現場で経験できたことを他の所でも実践してもらえたらと思います。またダンサーに対して、一緒に作っていく過程の中で大事にしていることがあって、踊るという経験プラス、嫌なことでも楽しいことでもその人にとって何か新しいことに挑戦する環境をつくること。例えばリノリウムの上でしか踊ったことがないのであれば、石の上で踊ってくれとか。それは振付家である僕の使命だと思っています。そして振付家と観客の関係性には”社会”がある。社会に影響を与え続けたいと思っています。その双方の役割って僕にとって必要なんだな、って最近感じています。そして、10年後も同じようなことをしているだろうと。それが自信にもなっているし、望みでもあります。
杉原 その出演者のことを考えるってとても重要なことだと僕も思う。俳優に新しい世界が見えていない限り、観客にも新しい世界は届かない。それに、俳優が最終的にやって良かったって思える作品じゃないと、観客が観て良かったって思える作品にはならないって僕は思う。人は絶対繋がっているから。
田村 そうですね。大人数を相手にすると、よりそう思いますよね。
杉原 演出家って人を見る仕事だから、あ、この俳優はきっといま納得していないだろうな、っていうのもなんとなく分かっちゃう。
田村 僕も「あ、今無理して踊っているだろうな」って分かったりすることはあります。でも総じて、最終的に僕の作品に出演して良かったなって思ってくれたら…。
杉原 それは本当に重要。まずはそこを目指すっていうことだよね。そこから広がりが生まれていく。
田村 求められているうちは、そこをやっていきたいと思います。
杉原 お互いに頑張りましょう。『STUMP PUMP』は残念ながら観に行けないんだけど、健闘を祈ってます!田村くんの中でまた新しい世界が開けていくんだろうなって思った。そのすぐ後になりますが『水の駅』での初タッグも、よろしくお願いします!
田村 はい、よろしくお願いします!!残りラストスパート頑張ります。今日はありがとうございました。
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杉原邦生
田村興一郎
1992年新潟生まれ。振付作家、ダンスアーティスト、ダンサー。DANCE PJ REVO主宰(NPO法人DANCE BOXアソシエイト・カンパニー)。国内外で活動中。 身体を多彩な視点で捉えており、作家として“ミニマルハードコア”と呼ばれている。横浜ダンスコレクションにて奨励賞、最優秀新人賞、シビウ国際演劇祭賞、若手振付家のための在日フランス大使館賞を受賞。香港、韓国、フランス、ルーマニアで作品制作上演。Dance New Air 2018ダンスショーケースキュレーター。発達障害児童へのダンス指導や地域福祉型ダンスシーンを手掛けるなど。イラスト作家としても活動。
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DANCE BOXアソシエイト・カンパニー DANCE PJ REVO『STUMP PUMP』