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03/09-10 垣尾優『愛のゆくえ』|リコメンドメッセージ | BLOG | NPO DANCE BOX

2019.2.25

03/09-10 垣尾優『愛のゆくえ』|リコメンドメッセージ

REPORT, RECOMMEND

3月9日(土)・10日(日)に上演する〈ダンスボックス・ソロダンスシリーズ〉垣尾優『愛のゆくえ』公演に向けて、今までに垣尾さんが関わってこられた作品や公演における様々なアーティストの皆さまからメッセージを頂戴しました!

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大谷燠(ダンスボックス・エグゼクティブディレクター)

  • 物語る身体!
  • なぜこの人のダンスは観ていて飽きないのだろうか。
  • 独特のテンポ・リズムで動きが展開されていく。裏切られていく快感。振付からはぐれ続ける身体。そもそも何を考えているのかわからない。しかし凄く考えていると思う。
  • ずいぶん昔に一度、垣尾さんに振り付けたことがある。全然、要求していることと異なる動きが出てくる。本人は意図的に変えているわけではないと思う。が、おもしろいのである。
  • 身体が、身体の動きが物語を生み出していく稀有なダンサーだ。
  • 以前、大野一雄が好きだと聞いたことがある。大野さんの踊りは観たことがないのに。
  • 今回のリハーサルを観ていて、大野さんを感じた。宇宙的な妄想力をもつ大野さんと垣尾さんにどのような共通項があるのだろうか。不思議がある。
  • ただ、観客が身をゆだねることができるダンサーであることは間違いない。
  • ソナタの名曲を聴くように、このソロダンスに酔いしれてほしい。

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岡登志子(アンサンブル・ゾネ主宰)

  • 随分長く一緒に仕事をしています。
  • 垣尾さんのダンスの特徴は常に不思議な進化を遂げていることです。
  • 見ていて踊りの上手い下手ではなく、この踊りを観ることができて良かったと
  • 思うと同時に、「ああ、また進化している、、、」と思わせるのです。
  • 彼は日常生活の中で色んなことを考え、佇み、覗き、育み、転んで、脱力、の
  • ようなことを繰り返しているのでしょうか。
  • これからもこの不思議な進化は続くでしょう。
  • なので、進化の過程をいま見ておくことをお薦めしたいと思います。
  • とても楽しみです。

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筒井潤(演出家、劇作家、公演芸術集団dracomリーダー)

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  • ジャカルタにて

 

  • かの一なるもの永遠にして、多に分かたる、
  • しかも一にして、永遠にただ一つなり。
  • 一の中に多を見出し、多を一のごとく感ぜよ。
  • さらば、芸術の初めと終りとを会得せん。
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  •                ゲーテ
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  •  垣尾優が天才であることは万人の知るところであり、ゆえにわざわざ私が記すこともあるまい。ここでは思い出話に耽ることにする。
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  •  2012年、山下残振付作品『船乗りたち』ジャカルタ公演で、私は垣尾優とホテルで同室となった。光栄だった。一説によると、彼のいびきを引き受けたのが私だけだったかららしいが。
  •  私たちは屋上のプールをとても気に入っていた。どうして他の宿泊客が利用しないのかわからないが、だいたい二人で占有していた。私は、通っていた小学校が水泳に熱心だったので、そのとき教わったもののほぼ忘れかけていたクロールを思い出すことに楽しみを見出していた。一方彼はずっとふわふわと浮いているだけだった。屋上で、しかもそのホテルより高い建物は隣接していなかったこともあり、仰向けになって浮いていると空しか見えない。空と身体だけ、しかも静寂というシチュエーションはなかなかありそうでない。私も堪能したが、彼はもっとハマったらしく、隙あらばプールに入った。私がシャワーを浴びている間でも「ちょっと行ってきます」とひとり屋上に上っていた。
  •  寝る前、彼の枕元に1冊の文庫本があった。ヘミングウェイの短編集だった。なんて洒落臭いことかと私は笑った。じゃあ筒井さんの本は何ですかと訊いてきた。ゲーテの詩集である。互いの洒落臭さに二人で大笑いした。
  •  彼のいびきは確かに大きいのだが、私は就寝時が鈍感にできていて、全く平気だった。何なら、彼がいびきをしていないと死んだのかもしれないと不安に思うほどであった。
  •  無事に上演も終えて、ジャカルタ最終日。フライトまでに中途半端な時間があった。彼にどうするのかと訊かれ、私は来る前からチェックしていたコタ地区に行ってみるつもりだと伝えると、彼も同行すると言うので、二人でトゥクトゥクに乗り込んだ。風と砂埃に目を細め、信号で止まるたびに強引に新聞や食べ物を売りつけてくるのを断り続け、到着。オランダ統治時代の建築とギラギラした人間の熱気で、雑多なエネルギーに満ち溢れていた。二人で夢中に歩いた。涼みがてらに入ったマンディリ銀行博物館ではシュールな展示に魅了された。
  •  博物館の中庭のような場所で、バンドの演奏とそれに観て応援している大勢の若者たちが目に入った。遠巻きに眺めているとどうぞお入りなさいとジェスチャーで誘われた。学校の文化祭のような催しが行われていた。ステージでは高校生くらいの子らのハードロックの演奏が続く。そこに集う若者たちは私たちのことが少し気になっているようだった。高校の文化祭に誰の知り合いでもない外国人が混ざっているのを想像してみてほしい。それは気になるだろう。私は写真を撮りたくなったが、そのときちょうどカメラの電池が切れた。私は彼をそこに残し、乾電池を買いに行った。小さな商店は沢山あるが、乾電池を売っている店がなかなか見つからない。結構遠出をしてようやく見つけ、戻ってきたときには約20分が経過していた。私は今でも時々このときのことをふと思う。垣尾優は約20分もの間、コタの若者によるハードロックの演奏を、周りの若者たちになんとなく意識されている中で、ひとり眺めていたのだな、と。読者の皆さんも少しだけ想像してみてほしい。こんなにワクワクすることがあるだろうか!
  •  私たちはこの後もさらに散歩を続けた。少し人の気配が感じられるものの廃ビルとも思える、マフィアが潜伏していそうな、いかにも怪しい巨大な建物が現れた。とても興味を持ったが、何せ醸し出すムードが不安を掻き立てる。私が躊躇していると彼が一言、「入りましょう」と言った。それを機に私たちはグイグイと奥に向かって歩き出した。どうやら文具や子供のおもちゃ等を扱う問屋のビルのようだ。ほぼシャッターが閉まっていたが、所々で商いをしている店もあった。暗く、ひんやりとしていて、細い通路がどこまでも続く。まさに迷路のようだった。そこで何をするわけでもなく、これが永遠となるのも厭わないかのように、ただ黙々と歩いた。これといった出来事も起こらなかった。ただ、彼も私も後になって、この時間がとても面白かったと回想している。私は、彼がいなければこの体験ができていなかったのかもしれないと思うと、感謝しかない。
  •  ホテルに戻ると、彼は最後にもう一度プールに入ると言いだした。これが最後ということで、私もお供することにした。
  • 「筒井さん、泳ぐの上手ですよね。」
  • 「雰囲気だけな。ところで垣尾くんは、ずっとそれ何してるの?」
  • 「新しい泳法を思いついたんです。こう、仰向けに浮きながら、頭の方じゃなくて、足の方に向かって進んで行くっていう…」
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  •  垣尾優はいつも私の道標である。
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福岡まな実(ダンサー)

垣尾さんのダンスの魅力は、身体が意識より半歩先に動いているところ。超かっこ良く動いている身体に、意識がちょっとびっくりしたり困ったりしている感じ。そのズレが素敵。ダンスとは関係ないが、あの人何を糧に生活しているんだろう。何か凄技でめちゃくちゃ稼いでいたりして。んーどうかな。イメージが特定できないのも魅力的だ。それにこうやって垣尾さんの魅力を考えるのが楽しいのもまた魅力。垣尾さんて天才だよねと友人と軽口を言い合うのもまた楽しい。

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砂連尾理(振付家・ダンサー)

死んだ者が成仏できずに姿を現したものを幽霊というが、まだ生まれてもいないのにこの世に姿を現してしまったものを何というのだろうか?もし垣尾優というダンサーを説明するとしたら、私はその何とも形容し難いものこそしっくりくる。

垣尾くんの体がダンスを求めたのは自然な成り行きなんだと思う。何故なら、まだ生まれていないのに生まれちゃったと誤解している彼の体はダンスすることでその溝を埋めるしかないからだ。ただ始末が悪いことに彼の体は節操なく色々なダンスに手を出している。それこそ西洋のバリバリのメソッドのあるダンスから殴り合いのパフォーマンスまで。まともなダンスレッスンは何一つやらず、生まれていないから何をやってもお構いなしよとその体を無責任に踊らせてる。そんな彼に、もうそろそろ生まれて来て良いんだよって僕はしょっちゅう言うんだけど、その度に彼は微笑むだけで、まだまだ生まれてくる気はないらしい。

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山下残(振付家・ダンサー

垣尾君には昔から結構作品に出て頂いてます。しかし彼のプロフィールにぼくの名前出てないですね。一応言うておきますけど松本雄吉さんがわざわざぼくの携帯に「今度うちの舞台に垣尾君出てもらいます。」とご挨拶の電話してくれるくらいなんです。まあこんなふうなことばかりいつも言うから嫌がられるんでしょうね。冗談はさておき、垣尾君のいいところは、型を使わず彼が自然に踊ったら型になるところだと思います。踊ることと振付することは相反することだとダンスを始めたときからぼくは感じていました。踊ったらフリーになり過ぎてしまうし、振付したらルールを決めすぎるし、垣尾君はそういうところから解放されて、自由も制約も関係ない悟りの境地に達しているのではないかな。垣尾君にはそういうダンサーであってほしいという僕の勝手な願望なのかもしれないな。作品的には昔フェスティバールゲートにダンスボックスがあったころにやった数を数えながらダンスするやつ、平日昼間にしか公演しないというのがかっこよかったです。京都芸術センターでやった宮北裕美さんとのデュオも凄かったな。あと枯れ木の下で落ちて来る葉っぱを待って落ちて来たら手で掴む作品も最高でした。最後に今回の公演のお祝いとして回文をプレゼントいたします「ああ垣王優様大きかああ」。

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  • 〈DANCE BOX ソロダンスシリーズ〉垣尾優『愛のゆくえ』

    日時:2019年3月9日(土)・10日(日) 17:00開演
  • 料金:一般 2,500円/学生・会員・長田区民・65歳以上 2,000円
       ※当日はプラス500円
       小・中学生 500円
  • 特設ページ:https://archives.db-dancebox.org/program/2831/

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