ダンスボックスで今年度より新たに導入した「アソシエイト・カンパニー/アーティスト制度」。アソシエイト・アーティスト枠では〈中間アヤカ〉と活動を共にしています。3月23日、24日の初単独公演『フリーウェイ・ダンス』に向けて、中間アヤカと、ダンサーの寺田みさことの対談を行いました。共に幼い頃よりクラシック・バレエを習得し、バレリーナになるべく邁進。〈バレエ〉という共通項を通して見えてくる(きた)二人の、ダンスに対しての在り方を存分に楽しめる対談となっています。そのうちのまずは〈前半〉をお送りします。
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- 中間 みさこさんとちゃんとお話しするのは、実は初めてですよね。
- 寺田 そうやね。黒沢美香さんの「ジャズズ・ダンス」※1で共演したけど、あの時は出演者が沢山いたし時間もタイトでワチャワチャしてたからね (笑)。
- 中間 そうですよね。
- 寺田 今日はよろしくお願いします。では、私から。アヤカちゃんのダンス経歴は、最初はバレエから?
- 中間 はい、3歳からバレエをやっていました。16歳でイギリスのバレエ学校に行って、18歳で帰ってきました。その後、バレエを辞めて1年間普通に働いていました。
- 寺田 辞めてどこで働いていたの?
- 中間 フィットネス・ジムの受付をしてました(笑)。
- 寺田 受付?
- 中間 インストラクターではなく、普通に事務をやってました(笑)。バレエはもちろん、ダンスも何もやらない生活が1年間あって。でも1年経った後に、なんか分からないけどまた踊りたくなりました。でもバレエの道に戻るのは無理だなって。お金はないけど、何か踊れる術はないかと色々探していて、もう1回勉強したいなっていう気持ちもあって。ダンスボックスが「国内ダンス留学@神戸 1期」を始めますっていうのを見つけて、それに応募しました。
- 寺田 じゃあ、それが復帰?
- 中間 そうです。
- 寺田 18歳で辞めたというのは、いわゆる挫折みたいな感じ?
- 中間 そうです、そうです(笑)。
- 寺田 最初は、海外でダンサーとして生きていこう的な希望を持っていたけど、なかなか難しかったとか?
- 中間 そうですね~。
- 寺田 私も同じ頃に2年くらい辞めたことがあった。高3ぐらいの時。
- 中間 え!そうなんですか!? 全然知らなかった。それはなぜですか?
- 寺田 恥ずかしい話やけど、一つには単純に学生生活が楽しくなって楽しい方に流れてしまった。もう一つは、アヤカちゃんと同じくいわゆる挫折です(笑)。高1の時にフィンランドの国際コンクールに出たのね。そこでのクラスレッスンの時に、欧米人と並んだ自分の姿を鏡で見た時は衝撃だった。当時私は、日本人の中では体型的に恵まれていた方だったし、「みさこちゃん顔小さくて色白でいいよね」とか言われていたのよ。ところがいざ欧米人と並んで見たら、顔おっきいわ黄色いわ!(笑)
- 中間 えーっ!みさこさんが!?
- 寺田 全然ちゃうやん!って (笑)。
- 中間 え~(笑)
- 寺田 なんて短絡的な(笑)。でも、その時期に海外のコンクールへ行ったことは、自分にとって大きかったと思う。バレリーナにとって体型的な条件って必須やん。その前提が明らかに劣っている中で、これから私は一体何を頑張っていけばいいのかが分からなくなったのね。そこであっさり挫けたというか(笑)。
- 中間 そうなんですね。
- 寺田 あとは、通っていたバレエ学校がバレエ団付属のところで、エリートコースみたいなところに入ってたから、発表会ではすでに主役とか踊らせてもらってたし、高校卒業後はバレエ団へのレールが敷かれていて…という感じで、既に先が見えてしまった。そしたら身近な憧れとか目標とかがなくなって、でも、遠くの憧れには届かないことを知り(笑)。そして、なんか学校面白いやんみたいな(笑)。
- 中間 重なりましたね。
- 寺田 熱が冷めていったのよね。それと、ちょうどコンクールが流行り出した頃で、とにかくコンクールだらけなのが嫌いで。
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- 中間 私は1回も出たことないです、コンクールに(笑)。
- 寺田 ほんまぁ!あの感じがどうしても馴染めなくて、でも、次、次って言われるから、しまいには仮病使ったり…自分で足にグルグル包帯巻いて(笑)、「捻挫しました」って。絶対バレてたけど(笑)。
- 中間 え~、なるほど・・・。
- 寺田 そこから2年程はダンスをやめて、ちょうど時代はバブル期で遊び呆けてました(笑)。もしかして、バブルの時ってまだ生まれてない?
- 中間 92年生まれです。
- 寺田 ・・・生まれてはいるな(笑)。でも知らないよね、全然。
- 中間 はい。
- 寺田 バブル期はバイトでバリバリ稼いで、ディスコで踊ってた(笑)。でもその辞めている間に、ピナ・バウシュを始め、それまでは観たことがなかったいろんな舞台を見ました。で、やっぱりもうちょっとやってみようかな・・と、石井潤先生のところを訪ねたら、今までのバレエの先生のタイプと全然違っていて。見学に行ったその日にいきなり創作バレエの舞台に誘ってもらって、すごく楽しくて。そのままゴロゴロゴロ・・・って。
- 中間 そうなんですね。
- 寺田 海外ではオーディションとかも受けたりした?
- 中間 はい。受けましたけど、技術的にということより、精神的にバレリーナ向きではなかったかもしれないです。もっと厳格な所でバレエを続けたいってずっと思っていて、いざバレエ学校に入ってみると、す〜ごいつまんないなーって思って。
- 寺田 そのバレエ学校自体が?
- 中間 そうですね。全然楽しくなかったです。田舎で育ったのもあってか、バレエが逃げ場だったんですよね。学校や家族からの逃げ場。自分にとってバレエはとても広くて自由なものなんだって思っていたんですけど、バレエ学校に入ったら、あれ?っていう。なんか全然自由じゃないって。で、髪をお団子頭にすることすら嫌になって。「バレリーナなんだから、朝早いレッスンでもメイクもちゃんとして学校にきて」みたいなことを言う先生がいて。なんかむかつくって思って、髪の毛を自分でバッサリ切って(笑)。
- 寺田 (笑)。
- 中間 で、ショートヘアで、レオタードじゃなくてヨガのトップスにバスケのパンツみたいなものでレッスンに行ったら、「髪を結ばないやつはバレリーナじゃない」って言われて(笑)。「じゃあ、私、バレリーナじゃないかも」って思って(笑)。
- 寺田 自ら(笑)。
- 中間 学校でのバレエの成績はドベだし。でも、コンテンポラリーダンス(以降、コンテと記載)の授業では、マース・カニングハムとマーサ・グラハムのメソッドに取り組んだのですが、その成績だけはずば抜けて良くて。
- 寺田 それ自分的にはやっていてどうだった?
- 中間 楽しかったです。でも、どこかでコンテはバレエができない人がやるものだって思っていたんですよね。だから、コンテの道に行くのは絶対にイヤだって思っていたんです。
- 寺田 なるほど、逃げ道みたいな?
- 中間 そうなんです、視野が本当に狭かったんです。
- 寺田 そして、負けん気は人一倍と(笑)。
- 寺田 アヤカちゃんは、ダンサーとしてオファーがあった時、それに対して受けたくないっていうのはある?
- 中間 まぁ、はい(笑)。でも、スケジュールがNGではない限りはほとんど受けます。
- 寺田 来た球はとりあえず打っとく的な?
- 中間 選んだことはあんまりないですね。選ぶほどオファーもないですし。
- 寺田 選ばないのはなぜ?
- 中間 なんでしょうね。話をいただいた時点で、その方がどんな作品を今まで作ってきたかは調べたり聞いたりしますけど。その人の作品が個人的に好みではなくても、やってみようかなって思います。
- 寺田 やってみてどんな感じ?
- 中間 やっぱり好きじゃないなって思う時はあります。でも、ダンサーとして舞台に立つ時は、不思議なことに自分の個人的な感情をあんまり持たないです。そこをすごく割り切って考えられるっていうか。ちょっと言い方が難しいんですけど、その作家が見せたいものを私が体現する、そういう意識はあります。作品の中で中間アヤカのままで立つことってあんまりないですね。
- 寺田 その、中間アヤカじゃない状態っていうのは、楽しい?
- 中間 すごく楽しいです。なんか、自分じゃないんですよね(笑)。だけど、振付家によって、私自身のままで立つことを求められる時もあります。「国内ダンス留学@神戸 1期」で一緒だった木村玲奈ちゃんの作品『どこかで生まれてどこかで暮らす』に、これまでずっと出演しているんですけど、この作品では中間アヤカのままで立ってくれって言われているような気がしてすごくしんどいです(笑)。
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- 木村玲奈振付作品『どこかで生まれてどこかで暮らす』
- 「トヨタコレオグラフィーアワード2014」より(Photo by bozzo)
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- 寺田 なるほどね、逆にね。
- 中間 しんどいっていうのはイヤって意味ではないんですけど。何でかな、バレエをやっていたからかな?ってちょっと思います。
- 寺田 その感覚はよく分かる。人の作品を踊る時に“自分”を消し去ることは、それを求められているかどうかに関わらず、自分の楽しみ。人の作品を踊るときの楽しみはそこよね。
- 中間 そこなんですよね!!
- 寺田 だから、自分で作る時には、絶対やらないようなことやりたいし。さっきアヤカちゃんが言っていた、この身体で作家の見せたいものを体現する、箱になるっていうか・・・「奉仕」(笑)。
- 中間 奉仕?
- 寺田 作品に完全に奉仕するっていう状態が、自意識と離れられる快楽があるの、たぶん(笑)。
- 中間 分かります分かります!
- 寺田 自意識が一番扱いにくいから、それをどう処理したらいいのかが自作自演になった時にたちまち分からなくなる。だから揺らぎのある状態でしんどくなっちゃう。木村玲奈ちゃんの作品は「それを持っていて」と言われることやろうね、「自分」を。
- 中間 そうですね。
- 寺田 確かにこの感覚ってバレエをやってたことと関係あるかも。こういう話って、他の人と共有できる?
- 中間 実はあんまり話したことないです(笑)。今日が初めてかもしれないです。
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- ※1 「ジャズズ・ダンス」
- ゴッドマザー・黒沢美香の代表作。2015年2月にダンスボックス特別企画として「jazzzzzzzzzzzz-dance」を上演。中間アヤカ、寺田みさこ共に「神戸ダンサーズ」として出演した。
- https://jazzzzzzzzzzzzx12.wixsite.com/main
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