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アンサンブル・ゾネの新たな境地。2年ぶりの新作公演「霧のようなまなざし」 | BLOG | NPO DANCE BOX

2017.1.25

アンサンブル・ゾネの新たな境地。2年ぶりの新作公演「霧のようなまなざし」

INTERVIEW, RECOMMEND

関西を代表するコンテンポラリーダンスカンパニー「アンサンブル・ゾネ」

1993年にドイツで活動を始め、岡の帰国後はずっと関西を拠点に新作を作り続け、国内外の劇場にて上演しているカンパニー。活動開始から24年目となる2017年1月28日、29日、2月13日、14日に新作「霧のようなまなざし」をArtTheater dB Kobe(神戸)、d-倉庫(東京)で上演する。

クリエーション中のアンサンブル・ゾネのスタジオにて主宰・振付家の岡登志子に今回の作品について、また、24年目を迎えるカンパニーの活動について伺った。

 

−「霧のようなまなざし」は2015年に岡さんの出身の旧二葉小学校で上演した「即興戯曲 飛ぶ教室は 今」以来の作品ですよね。約1年ぶりとなる新作ですが、作品の制作のプロセスについてお伺いできますか。

 

 「飛ぶ教室」は高瀬アキさんとの共同作品だったので。ダンスの作品としては前の「迷い」(2014年)から2年ぶりの作品です。その間に小さな作品もあったんですけど。アンサンブル・ゾネの作品としては2年ぶりですね。

 

−この2年かけて作ってきたということですか?

 

 実際に作業したのは、半年くらい前からです。それぐらいから考え始めて、リハーサルし始め、各ダンサーと振りを出していって、それを溜めていくってことをずっとしていたんです。

 

−作品を作るときはいつもそれぐらいの期間をかけているのでしょうか。

 

 3ヶ月とか、4ヶ月とか、もっと短い時もあります。


−では、今回の作品は少し長めの期間をかけて作っているんですね。何か作品を作るにあたって変化があったのでしょうか。

 

 この作品の創作に入る前にエリック・サティを踊るという企画で「となりのシグナル」という作品を作ったんですけど。それは私と糸瀬(公二)くんと垣尾(優)さんとみのり(住吉山実里)ちゃんの4名でやったんですね。それは音楽家と即興がテーマでやったんですけど、創作方法として、全員で作っていったんです。

その時に感じたことがあって、その次の作品なので、そこで感じたことをどう消化できるか、ということに時間がかかりました。

作品に向かっているんだけど向かっていないような時間があって。色々試したんですが、ダイレクトに振付として残っているというわけではないかもしれない。ただ、作品の一部としてどこかにそれが残っているかもしれません。

 

−ダンサーと共同で振付をしていく中で、感覚が変わっていることはありましたか。

 

 感覚が変わるというか、そもそも、自分の中で変わっていたんですね。それをここに持ってきたという感じです。

 

−今、岡さんの中で身体性、即興性がどのように変わってきていますか。岡さんの振付には即興が少ないように感じていたのですがいかがでしょうか?

 

 即興と振付ってある意味《隣り合わせ》なものなんですよね。振りを考えるときには即興的に出てくるもので。振付においても、それをできることなら持続させたいと思っています。

今回も振付をしてますけど、その一瞬一瞬をダンサーが無になって紡ぎ出す即興に向かえたらいいな、と。だから、音楽のカウントに合わせてとか、こう見せたいというよりも、スケッチを研ぎ澄ませていきたいというか。

人に見せてもいいようなスケッチをしたいと思っています。

−舞台上でダンサーが自ら紡ぎ出すような?

 

 作品自体も構成していくことも、あまり計算尽くでやっているわけでなく、イメ−ジもあまりなくて。イメージはあったんだけど、それをあえて、表に出したくなくて。自分が作品全体を構成していく中で、ここはどうなっていくんだろう、つくっていきながら、発見していっている感じです。

自分がやっていることを見て、私ってこう考えているんだ、ということを感じたりしながら。そこにしかできないもの、スケッチでしかできないものをやってみたかった。

もちろん始めにコンセプトのようなものもあるんだけども。それを持ちつつ、作業をしていくときに、最初に《こういうことでこうしたい》というあるべきことにもっていくと、逆にそれが自分の中でフリ−でなくなる部分、縛られてしまうような気がしていて。

スケッチを描いてても決まった大きさの紙だけじゃなくて、どこまであるか分からない紙にかいてみるのも面白いかもしれないじゃない。いつもだったらこれだけのキャンパスのなかで書かないとダメだけど、10メ−トルの紙とか、端がないような紙とか。

そんなことを考えていたんです。

 

−創作の方法を今までのやり方と大きく変えていると思うのですが、それができたのはなぜですか?

 

 そうですね。一緒にやっているダンサーが、それができるようなダンサー達がいるのが大きいです。それがすごくありがたいですね。


−今までの作品よりもダンサーとの創作過程において影響し合っているということですか?

 

 クリエーションの中で、彼らの世界が彼らの中で掘り下げられていく、そして私も掘り下げている。お互い積み重ねていけています。でも、これはこの作品のためだけじゃなくて、これまでのやってきたことの中でできていることかもしれない。振付も試されるけど、ダンサ−も試される。

試されるところでやるということが、やってて面白いんじゃないかと思います。

 

−岡さんの中でそういった変化というのはどのように起きていたんでしょうか。重ねてきたこともあると思うのですが、何かきっかけはあったんでしょうか?

 

 ずっと即興で自分がやってきた踊りがあるんです。

踊りをなぜ踊るのか、ということが創作につながっているんですけど。ソロを踊る、自分の踊りを踊る、探し続けるというか、踊りを少しでも進化させていきたいと思っているので、それをずっと続けている中で、最近手応えみたいなものがあるんです。言葉にできないんだけど。

まだまだ踊りに興味が持ててる、やってて楽しい、ただ単なる楽しさだけなくて、必死なの。必死なんだけど、体のもっている力というか、想像力と向き合っている。ここまでやってきて、今ようやく言えることかもしれない。

これだけの期間やってきて初めて手応えがある。今、一個あったら、もしかしたら二つ目もいつか生まれるかもしれない。手応えという可能性を感じています。そういった積み重ねは自分の中で大事にしていきたいことだし、創作においても可能性が大事だと思っていて。そのためには、フリーなところを大事していたい。枠にはめちゃうとそこに縛られちゃうんですね。

 

−その即興や岡さん自身の踊りで感じていることが創作につながっているんですね。

 

 つながっています。作品を即興的に作る、ではないけど、計算尽くではなく、自分の内側に向かって正直に。そのように今までも作ってきたんだけど、構成とか、今回は何もできるだけ考えないようにしています。だから、空間的に(岩村)原太さんが困っているんだけど。(笑)

いつも一個やったら宿題があるんです。今まで長く活動していて、どう変わったかって聞かれたけど、ずっとこうやって一個やったら、宿題を見つけて、宿題を提出して、さらに宿題が出てきて、みたいな感じでやっています。

枠を持たないで物事をやっていくということが、自分と向き合う上では大事なことだと思っています。また、自分の中でなんのために踊るのか、ということを忘れず、というより根底にあって、踊りが生まれてくるので、それを大事にしていますね。

−アンサンブル・ゾネは93年から活動をされていますが、継続することは大変でしたか?

 

 93年はドイツで活動を開始していて、大学の卒業性の友達たちとアンサンブル・ゾネをやったんです。

そもそも、作ることが好きで。作品を作っていきたいんだけど、それは簡単なものじゃないと思っています。やるたびに宿題があるからね。

物事をつくるっていうのは、私がつくりたいと思っていることは、やっぱり簡単に作れるようなもんじゃないんじゃないかな、というか、自分が納得するようなものを作るというのが、難しいと思っています。

作品をつくるっていうことは、もちろん年齢を重ねていくこと、時間をかけて出来てくること、プロセスがあるからできることです。

 

−岡さんが「見たいダンス」という言葉が印象に残っているのですが、それはどのようなダンスなのでしょうか?作品を向かうときに想像しているのでしょうか。

 

 作ったものを見て、あーこれが見たかった!みたいな感じです。最初からこれを見たいと思って、作ってはいないです。まずは、コンセプトのような言葉をダンサーに見せて、彼らが想像して、それを紡いでいって、私が振りを変えたりして、それを一人が踊るでしょ、そのときに初めて踊りを見てみて。

これが見たかったな、とか、これがよかったなって思ってます。

もちろんダンサーそれぞれ、キャラクタ−も、スキルも、踊りも違うので、踊りを見て、その人の言いたいことが踊りに出ているのか、出ていると私はドキドキするので。

ドキドキさせてもらったことを私が見て、自分の中でこうなったらどうかな、というように振りを作っています。ダンサーがその振りをつかって、さらに深められたら、よかったな〜、と思っています。

−最後にこの公演のオススメポイントを教えてください。

 

 私はダンサーが舞台の上にいて、もちろん踊りがそこに現れてくるんだけど、作品も、そのダンサーも、そのものだけじゃなくて、その後ろに何があるのか、考えながらみるのが面白いんですね。

そういうのを楽しんでもらえるのが私としては嬉しいですね。

《振付家プロフィール》

岡登志子-Toshiko Oka-:神戸生まれ。ドイツNRW州立 Folkwang芸術大学舞踊科卒業。アンサンブル・ゾネ主宰。現代を生きる人間に共通する身体を通し、人間の実存を問う作品づくりを行っている。2010年より大野一雄フェスティバルに参加。2014年神戸長田文化賞受賞。2015年文化庁新進芸術家海外派遣制度にて欧州公演。近作に『霧のようなまなざし』、音楽家・高瀬アキとの共同制作『即興戯曲 飛ぶ教室は 今』など。

 

(photo & text : junpei iwamoto)

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