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【アーティストインタビュー①】山崎広太×アラン・スナンジャ(国内ダンス留学@神戸6期生) | BLOG | NPO DANCE BOX

2017.9.14

【アーティストインタビュー①】山崎広太×アラン・スナンジャ(国内ダンス留学@神戸6期生)

INTERVIEW

今年で6年目となる「国内ダンス留学@神戸」は、5名の日本人参加者に加え、初めて海外(アルゼンチン、イスラエル、オーストラリア、トーゴ)から4名の奨学生を迎え7月末よりスタートしました。9名の6期生は、5週間のワークショップ期間を終え、現在【NEWCOMER/SHOWCASE】#1山崎広太振付作品(今月18日公演)に向けて、日々クリエーションに取り組んでいます。

クリエーション開始から折り返し地点の10日目(9/10)。その日は、貴重なオフ日でしたが、劇場ではトーゴ人のアラン・スナンジャによる「アフリカンダンス教室」の初回日でした。クラス終了後、山崎広太氏とアラン・スナンジャのインタビューに、この度山崎氏の振付家アシスタントを務めることになった6期生の宮脇有紀を加え、お話を伺いました。

—今日はどうぞよろしくお願いします。【NEWCOMER/SHOWCASE】の振付では2年目となる山崎広太さんと、このダンス留学で初めて日本に来たアラン・スナンジャには、意外な接点があり驚きました。実は、アランが師事しているパトリック・アコギー氏の母親のジャンメイ・アコギー氏と2003年に広太さんが共同制作されていたそうですね。

山崎:ジャンメイとの出会いは2000年です。彼女が日本人の舞踏家と仕事をしてみたいと日本に訪れた事がきっかけでした。これを機に、ダンスを通して人生の転換期だったのでNYに渡ろうと心に決めました。2003年に1年間のクリエーションを経て2004年に初演を行い世界各地で彼女との共同作品を上演しました。今僕がNYでサバイバルできているのはアフリカでの経験や、そこで出会った黒人のネットワークによって支えられているところもあります。ジャンメイと出会ったことで僕の人生は大きく方向転換しました。アランは、ジャンメイとそのご子息のパトリックが創設したセネガルにあるダンス学校【エコール・デ・サーブレ】出身なんですよね?

アラン: 私は主にパトリックから3年間ダンスを学びました。お二人は、アフリカにダンス学校を創るためにとても苦労され、本当に尽力されています。ジャンメイは、“アフリカの(コンテンポラリー)ダンスの母”とも言われています。パトリックは、伝統的なアフリカンダンスの概念を一旦崩し、コンテンポラリーダンスをアフリカに広めた一人です。私はダンサーとしての価値観が変わってしまうほど、このお二人に魅了され強い影響を受けました。ジャンメイから、広太さんをとても尊敬し好きだという事を聞いていたので、広太さんの名前はずっと私の頭の中にありました。彼女の授業で広太さんとの共同作品『ファガラ』の映像を観たのですが、見終わったあとに「すごい!!」と拍手し興奮するのではなく、その時はただ黙ったままカバンを持って茫然と教室から立ち去る事しか出来ないほどの衝撃でした。何かが自分の内面に強く訴えかけ「今私は何をしていて、何をしたいのか?」という事を問わざるを得ない心情になりました。

—とすると、広太さんとの出会いや今の状況はアランにとって夢のようですね。

アラン:はい。広太さんといま一緒にクリエーションをしていることが未だに信じられません。アフリカのダンサー仲間にも「本当に君はラッキーだ」と言われました。

ダンス学校を卒業する頃にジャンメイに今後どうするのかを聞かれ、「国内ダンス留学@神戸」に参加するため日本に行くことを報告しました。彼女はとても喜んで「日本に行くならあなたは常に心を開いて頑張りなさい。あなたのキャリアはこの学校にとっても大きな価値がある」と言ってくれました。

—広太さんは、“アフリカの(コンテンポラリー)ダンスの母”とまで言われるジャンメイ・アコギー氏について、コラボレーションする前からご存知でしたか?

山崎:全く知らなかったです。けれども、ジャンメイに出会えたことはとてもハッピーなことだと思います。アランのダンスを見る限り、ステップが素晴らしくアフリカンダンスのムーブメントの中に柔らかさがあると思います。しかも、アフリカンダンスだけに囚われず、何かそこから更に発展していきそうで、とても可能性があり非常にピュアです。子供の様な笑顔もみせるしね(笑)アフリカのダンサーで、ここまで私のクリエーションについていけているのは珍しいですし、凄いです。

アラン:とても嬉しいです。先日、広太さんが今新長田で滞在している部屋に6期生を招いて食事会を開いてくれました。その時、広太さんに「なぜここ(日本)に来ることを選んだの?」と聞かれました。私のダンサーとしての道のりはまだまだこれからも続きます。長く踊って行く為に、様々なことを経験し発見したいと思いここへやってきました。初めて『ファガラ』の映像を見たとき、一つの動きに対して非常に時間をかけるダンスを見て「なぜ私はこのように踊らず、また、このように踊ることができないのだろう?」と考えました。それまでは、速くパワフルに踊る事を好んでいたので、私のダンスには忍耐がないという事に気付きました。なので、先日クリエーション中に広太さんから「アランは女性のように踊るね」と言われたことがとても嬉しかったです。このプログラムを受け始めて自分でも私のダンスや身体が少しずつ変化している事を感じています。

宮脇:確かに一緒にワークショップを受けていて、アランは特に広太さんや由良部正美さん(舞踏クラス)のワークショップ後に変化したように感じます。というのは、岡登志子さんのワークショップの中で「誰かにあてた手紙」と言うテーマで即興をしました。アランはお父さんに宛てた手紙をもとに踊ったのですが、その時見たアランの踊りに今までと全く違った印象を受けました。“歩く”“椅子に物をかける”など、いたってシンプルな動きで、普段パワフルな踊りをするアランとは思えない違ったエネルギーがそこには流れていました。

—アランから広太さんに何か聞いてみたい事はありますか?

アラン:以前も同じ質問をしたのですが、今のクリエーションで広太さんが何を求めているかをもう一度聞きたいです。

山崎:2つあります。1つ目は8月の特別ワークショップにも行った、お客さんとパフォーマーとのヒエラルキーをどのように提示できるかという事で、関係をフラットにする事です。何を言いたいかというと、ダンスはスペシャルなものではなく僕にとっては日常的なものであり、日常とダンスはいつでも融合できるものであると思っています。2つ目は、今までバレエやアフリカンダンスなど様々な身体のバックグラウンドを持つパフォーマーたちとクリエーションしてきましたが、それぞれの身体の共通点は“闇”であり、最終的には“闇”がいろんなものを吸収してくれるのだと僕は思います。また、ダンスを通じて身体が蒸気化したような状態を実現し、それぞれのダンサーの人生や方向性が突出することをイメージして現在作品をつくっています。それ自体はとてもスペシャルなのですが、いきなり「何でもなかったですよね~」という方向性のダイナミズムを出したいですね。「やったね!すごいね~!」という事ではなく、「普通にやっているだけですよ」という感じでやりたいですね。僕はカーテンコールが嫌いなんです。(笑)

アラン:広太さんのクリエーションが始まってから、よく出てくる「闇」や「蒸気」と言う表現を理解する事ができず、はじめはとても困惑しましたが、今は少しずつ身体で理解できるようになってきたように思います。更に深く理解する為に、クリエーション中は絶えず広太さんに何を求められているかということを考えています。今までアフリカで経験してきたクリエーションでは、映像で見せられた振付を踊ることや、何かテーマを与えられてそれぞれが動きをつくってくることが多かったですが、広太さんのクリエーションでは“動くこと”を重要視するのではなく、“動きのプロセス”を見ようとしているように思います。

山崎:あともう一つありました。去年のクリエーション中に宿泊していたゲストハウス・寿荘に過去のDANCE BOXのチラシが沢山貼ってありますよね。DANCE BOXは劇場の外側に対するアクティビティが多いんだなと思い、僕もやってみようと思いました。(笑)外へのアプローチや、お客さんをどのように巻き込んでパフォーマンスをやるかという事は、長田の影響も結構受けています。先ほどのアランのアフリカンダンス教室に参加していた人も地域の方が多かったですよね。新長田の下町コミュニティーはとても素晴らしいです。今回のような作品は、東京では実現できないだろうなと思います。

−新長田の街にとってもスペシャルな作品になっていると思います。

ところで、今回の公演には広太さんも出演されるとのことですが。

山崎:そうですね。とても実験的ですが、今回は出演します。でも、身体を極限の状態に持っていくので、公演の翌日立てるかどうかわかりません。(笑)

アラン:本当に出演するのですか?ずっと冗談だと思っていました。スゴーイ!クリエーションでは広太さんから、難しいことを要求されることもあります。そんな時、広太さんは「大丈夫!頑張って!君なら出来るよ」と後ろから支えてくれます。私は安易に「ありがとう」と言うのは嫌いなので、自分のダンスでその感謝の気持ちを示したいと思います。

山崎:そんなことをダンサーに言われたのは初めてです。嬉しいですね。(笑)

宮脇:広太さんのクリエーションは比較的言葉が少ないのかなと思っています。頭で考えるのではなく、キーワードを貰って動きをつくっていく過程は、自分の身体に嘘をついていないような感覚です。6期生はどうしてもダンサー同士で言葉の壁があるのですが、今は広太さんのアプローチの方法で全員が同じものを受け取っているように思います。

山崎:6期生は本当にお互いの関係性がいいなと思います。このプログラムは、日本人と海外メンバーどちらにとってもいい経験だと思いますし、今後作品をつくる上でもプラスになると思います。

宮脇:「国内ダンス留学@神戸」に応募した時は、まさかこのような展開になるとは思っていなかったので、本当にいい経験が出来ていると思っています。

—そうですね。今後も互いに切磋琢磨して行くことを期待しています。

それでは、6期生の初公演まで引き続きどうぞよろしくお願いします。

一同:よろしくお願いします。

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<公演・ワークショップ情報>

◆国内ダンス留学@神戸6期 NEWCOMER/SHOWCASE

#1山崎広太振付作品『ダンスは日常生活ダ!第2弾』

日時:2017年9月18日(月・祝)15:00〜 アフタートーク有り(ゲスト:大澤寅雄)

会場:ArtTheater dB Kobe

チケット:一般前売 1,500円/5公演パス 6,000円

donBuri会員・学生・長田区民割引前売 1,000円/※当日は前売料金 200円増

Web:https://archives.db-dancebox.org/program/1153/

6期生特設サイト:https://danceryugaku.wixsite.com/main6

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◆「アランのアフリカンダンス教室」参加者募集!

日時:2017年9月23日(土)、10月9日(月祝)、10月22日(日)、12月3日(日)

   2018年1月7日(日)、1月21日(日)、2月11日(日)、2月25日(日)、3月18日(日)、3月25(日)

   キッズクラス 11:00〜12:00/大人クラス 14:00〜15:30

会場:ArtTheater dB Kobe

チケット:キッズクラス  500円/大人クラス  2,500円

donBuriクラブ会員・長田区民割 2,000円

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<お問合せ・ご予約はこちらから>

NPO法人DANCE BOX

〒653-0041神戸市長田区久保町6丁目1−1 アスタくにづか4番館4階

電話:078-646-7044 メール:info@archives.db-dancebox.org

WEB:https://archives.db-dancebox.org/

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(編集:米澤百奈、写真:岩本順平)

 

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