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【NEWCOMER/SHOWCASE #5】インタビュー 伊藤千枝×石黒美彩(国内ダンス留学@神戸6期) | BLOG | NPO DANCE BOX

2018.1.23

【NEWCOMER/SHOWCASE #5】インタビュー 伊藤千枝×石黒美彩(国内ダンス留学@神戸6期)

INTERVIEW

国内ダンス留学@神戸6期「NEWCOMER/SHOWCASE」5人目で最後の振付家は、「珍しいキノコ舞踊団」主宰の伊藤千枝さん。2007年初演の作品「あなたの寝顔をなでてみる。」を国内ダンス留学@神戸のメンバーにいはらみく(国内ダンス留学@神戸4期、5期修了)を加え10名のダブルキャストで1月28日(日)に再演します。1月15日の稽古終了後に、伊藤千枝さんと6期生の石黒美彩に、「再演すること」を中心にお話を伺いました。

 

― 昨年末から始まったクリエーションが9日過ぎましたが、今の時点でどんな感触がありますか?

伊藤:楽しみですね、すごく。今年に入ってから3日目くらいにだんだん面白くなって来たなと思いはじめてきました。年末の稽古では、どう進めて行こうかと探っていたような感じでしたから。今年みんなと稽古を再開して、どの辺りに着地点があるかまだ見えていないのですが、何か面白い事が日々始まって来ている感触がすごくあります。みんなもきっとこの感触を共有してるのではないかなと思います。今は、いろんなアプローチや方法でどうすれば面白いことが起こるだろうかと言う事を試せていて、それがいい方向に進んでいると言う実感があるのですごく楽しいです。

− 新作をつくるのと再演をするのでは、全然違う取り組みだと思うのですが、今回この作品を再演作品として選ばれた理由はなんでしょうか?

伊藤:元々「寝顔〜(あなたの寝顔をなでてみる)」は、キノコ(珍しいキノコ舞踊団)のメンバーで再演を繰り返して来た作品なので、私の中で作品のカラーがしっかりとあるのですが、敢えてこの作品をみんなと一緒にやることで、また全然違う次元の作品になるんじゃないかと思い持ってきました。今回は、「再演」と言うものをどのように捉えてやるのかと言うことも、私自身にとってのチャレンジでもあり、以前からやってみたいなとすごく思っていた事だったんです。稽古では、全くそのまんまの振付をやってみたらどうなる?というチャレンジもあるし、または、同じテーマでアプローチを変えてやってみよう!ということ等、いろんなことを試しながら進めています。

− 稽古のはじめの方は、「再演」ということに対してみんな戸惑っていましたよね?

石黒:はい、はじめは戸惑っていました。振付家を目指すメンバーが多い中で「再演」をすることに対して何かがひっかかっていました。それは、まだ「再演」と言う事に対して考え方が浅かった事もあり、そのままの振付をもらって、見本の映像のままをすると思っていたので、正直しんどいなと思っていました。稽古が進むにつれてそうではなく、自分達の身体で出来る事、このメンバーで出来る事を探って行くと言う事を聞いて気持ちが楽になりました。

伊藤:最初は美彩が言ったみたいに、作品の窓口が狭くなってしまう気がしていたので、どうやればそれを広げられるかなと思っていましたが、やっていくうちに新作をゼロからつくる時よりもむしろこちらの方が自由にやっているなと言う感覚が芽生えて来ています。ちょっと面白いな〜と言う感じです、不思議ですけど。美彩はどんな感じですか?

石黒:そうですね。逆にベースがあるからそれを壊せると言うか…

伊藤:そうかも、確かにね。

石黒:制限があるから自由にできると言う感じですね。

− キノコのメンバーだと、ある程度の共通言語があるけれども、それを持たない新しい人たちとの作業と言うのがそうさせているのですか?

伊藤:それもあると思いますが、やっぱり10年と言う歳月があってその中で私も変わって来ているので、当時考えていた事や大事にしていたテーマが、よりクリアーでシンプルになってきていると言う事だと思います。それで、みんなとやっていく中でどんどん明確になって来る。元があるからこそ得られる自由もあります。あまりそう言う考え方で再演を捉えた事がなかったので面白いですね。

— ところで、稽古中の千枝さんの身体は、ダンサーに指示を飛ばしながらもよく動くと言うか、すごく反応していますよね。身体にくる感覚をごまかしていないというか、素直と言うか。


伊藤:そうなってきましたよね。昔は頭で考える事も多かったです。今の生活環境が一般的に文字ばかりで、話すよりも書いている時間が多く、身体感覚がどんどん自分と離れて行くような社会環境と言うか生活環境になってきていますよね。例えば、指を動かせば画面の中の人が蹴るけど、実際自分は蹴る方法を知らないとか。私たちは折角ダンスと言うものと関わっているのだから、ちょっと頭に偏っている思考を身体に戻していって、うまく連動させてバランス良くできればと思っています。身体っていろんな事を知っていて、実はすごくいろんな事を私に教えてくれるんです。疲れも身体が教えてくれますよね。私は今までその辺りをごまかしてきていて、仕事が順調な時に、疲れていると言う信号も聞かず、気合いや勢いでやってそのしわ寄せがバンと来て体調が悪くなったりしていました。今はそこの信号を自分でちゃんと聞く回路を持てるようになったというか…

− となると、怪我とかそう言うのも…

伊藤:減ってきました。若い時ってどうしてもパワーがあるじゃないですか。それが若さのいいところで、やりすぎちゃうというのがどうしてもあるのですが、そこでちゃんと自分の身体の言葉を聞けるようになると、自分が持っているパワーをより上手に使えるようになると思います。

石黒:最初、千枝さんに「無理をするな」って言われる事がすごく嫌だったんです。今まで出来ない事を出来るようになりたいってずっと思っていて、この作品に出たら自分の出来る事が増えると言う事を否定されている印象だったので、構えていたんですよね。でも、稽古が進むにつれてずっと腰がしんどくてだんだん動かなくなってきて…という事を経て、こういう事なんだっていうのが分かりました。身体をちゃんと聞いてあげなさいとか無理をしてはいけないということ、自分が出来る事ということの意味が分かってきました。

伊藤:実は自分が思っているよりも自分が出来る事ってすごくたくさんあって、だけど、普段自分が踊っている時にそれを忘れてしまって、ないものばかりを手に入れようとしちゃうんだよね。これがいろんな意味で身体に負荷をかけてしまうので、私は自分が持っているものを如何に最大限に、自分が知らない事も含めて知って行くと言う事をまずやりたいと思っています。今私自身もそれをやっているところ。昔私もそうで、持ってないものが欲しいって思っていました。でも、自分が持っているものも知らないから、ただ隣の芝生が青く見えるだけだって、ある時気がついたんです。じゃあ、自分の持ってるものって何だろうって探し始めたらすごく面白くなって来て、自分が踊る事も楽しくなってきました。それまではいろいろ怪我もあったのですが、身体に負担がかからなくなってきたのですごく動けるようになり、いいことばかりが起き始めてきました。そうなると「隣の芝生は青い」けど、「青いね〜」って言うので済むようになってきました。「それも欲しい、あれもこれも」って思わなくても、気持ち良くて楽しいものをすでにたくさん持っていて、これを如何に自分で使って行こうかというのが、今はすごく楽しいです。「ごまかさない」って言うのはとても大事じゃないかなと思います。その時の自分の感覚、一番最初に無理しないでって言われるのが嫌だったっていうのも素直な反応なのでそこも止めないで、「やなんだよ」って素直に反応を出すって言うのはとても大事だし、だからこそ今があるということですよね。多分その繰り返しじゃないですか。それを20代のうちにいっぱいやっておくと明るい30代があると思いますよ。(笑)

石黒:私たちの身体を見てない状態で再演作品を持って来るってすごく勇気がいる事ですよね、それでもこの作品が好きだから私たちとやりたいと思ってくださったって事ですか。

伊藤:会った事もない人と好きな作品を再演すると言うのをやってみたかったですね。初めて会った人と新作をつくると言う事は、別の機会で何回かやってきたのですが、そうじゃなくて決まった作品をやると言うのは今回初めてです。再演と言うものを考えたいな思っていたところでしたし、初めて会う人たちと再演するにあたってどうやって接したらいいかと言う事にも興味があったので、もちろん勇気もいりましたが、それほど前情報なしで来ましたよね。

— そうですね。去年7月上旬くらいに参加者のプロフィールをお知らせしたくらいですね。

伊藤:稽古はじめに言ったように、私よりもみんなの方がお互いの事を知っているから、チームを自分達で作ってみてと言うのはそう言う事でした。でもそれも面白かったですね。

石黒:5人のダンサーで上演するというのは最初から決めていたんですよね。

伊藤:そうですね、この作品は5人の作品なので崩したくないというのと、あと音楽もこの曲は絶対使いますと言うのを守りたかったですね。後はわりとどのようにでも行けるかなと言うのはありますね。

— この作品のテーマと言うか大事にしたいところは何でしょうか?

伊藤:今みんなと共有しているテーマは、「意識」と「無意識」があったとしたら、その「間」にアプローチしたいなと思っています。意識と無意識の「間」と言うものにアプローチするような方法はないだろうか、どうしたらできるんだろうか。観客や一緒に踊っているパートナーのそこにもし自分がタッチ出来るとすれば、タッチした時に同時に自分にも何かが返って来るんじゃないかと。一方的なものではなく、必ず返って来るっていうのが自然の法則としてあると思うんですよね。そこを一生懸命みんなで探しているところですね、踊りながら。少しずつそういう不思議な感覚と言うのを、踊りの中でみんなが掴み始めているような気がしていて。オープニングのシーンでも気持ちよくフワッとシンクロする瞬間があったりするでしょ。なんでそうなるかわからないけど、でもそう言う時があってその時ってすごく気持ちいいし、みんなも同じ気持ちにフワッてなってるはずですよね。

石黒:はい、ありますね。

伊藤:稽古中では、それを見てる私もフワッとなってるので、それは観客の身体感覚にも伝わるはずだと思います。それを観客が感じたら、そのフワッとなった感じがまたステージにも返って来ると思うので、それをダンサーがもらった時にまた別のことが起こるかもしれない、それは本番でしか起こらない事ですよね。それがライブの面白いところだと思います。なので、あんまりゴールを決めてそこに向かって完成形をやっていくやり方よりは、少し曖昧なところを残しつつ、毎回毎回違う何かが起こる環境を自分達でつくって行こうねと言う感じでリハーサルをしているところです。

− すると、人が変わればもっと違う事になるということですね。今回ダブルキャストで2回上演しますが。

伊藤:もちろん全然違うし、同じ人でもその日によって身体の状態や天気によって気分も変わるし、その辺りを全部受け入れてひっくるめて出来るようなものが面白いと思います。

− これは2公演とも必見ですね。

伊藤:絶対見た方がいい。なんつって。(笑)でもそうじゃない?

− マチネとソワレでは、同じシーンでも出演人数が違っていたり、それぞれやっていることも違うので、2倍の楽しみでは収まらないです。

伊藤:3倍楽しいと思います!

− 千枝さんは稽古中の美彩を見ててどうですか?

伊藤:毎日毎日どんどん変化してますね。これから先またどう変わっていくか楽しみだなと思いながら見てます。自分でもずっと変化してる感じはない?

石黒:今やっとみんなのことを思えるようになってきました。(笑) 今まで「そこ私が通る!邪魔や!」って余裕がなかったですね。この先の稽古の中で、ゴツゴツした個性が作品の中でまとまればいいなと思ってますね。

伊藤:なんかでも、まとまらなくても良くない?(笑)って感じは少しあって。みんなが気持ちいい状態がつくれるのがベストかなと思っています。

石黒:みんなが思いやりをお互い持って。

伊藤:そうだね。テーマはあるけど、捉え方がそれぞれ違ってもいいと思っていて、そのものに向き合う姿勢もバラバラで同じに揃える必要ないし、テクニックも揃える必要ない。その中でも隣の人と同じ場にいる事が気持ち良くて、お互いに邪魔しないで楽しくて、それでいてそれぞれが思いっきりできるような空間を思いやり合いながらつくると言うのが今回目指したいところですね。

− 本番まで、より濃密な時間になると思いますがどうぞよろしくお願いします。

 

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国内ダンス留学@神戸6期

NEWCOMER/SHOWCASE #5 伊藤千枝振付作品

「あなたの寝顔をなでてみる。」

日時:2018年1月28日(日)14時〜/17時〜

その他詳細は 特設ページ へ。

 

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